瞑想の効果 — 科学が示したこと、示していないことを分けて読む

瞑想の基本

瞑想の効果について、科学が比較的確かに示しているのは、ストレス・不安・抑うつ症状の軽減に「中程度」の効果があるということです。2014年に発表された大規模なメタ分析がその根拠になっています。
一方で、瞑想が万能であること、薬や運動より優れていること、誰にでも同じ効果があることは示されていません。研究の質にはばらつきがあり、不快な体験の報告もあります。
このページでは「示されていること」と「示されていないこと」を分け、瞑想を続けてきた者の目で効果という言葉そのものを考え直します。

瞑想の効果を語る前に — 「効果」という言葉の注意点

瞑想の効果を検索すると、「ストレスが消える」「集中力が上がる」「脳が変わる」「幸福度が高まる」といった言葉が並びます。それらは間違いとも言い切れませんが、正確でもありません。研究が示している内容と、それが伝えられる過程で膨らんだ内容の間には、かなりの開きがあります。

科学的な研究で「効果がある」と言うとき、それは「ある集団にある方法を一定期間行ってもらったところ、何もしなかった集団と比べて、ある指標の平均が統計的に意味のある差で変わった」という意味です。個人に必ず起きることを保証するものではなく、効果の大きさ(効果量)にも、小・中・大の幅があります。また、研究の設計によって信頼度は大きく変わります。比較対象が「何もしない」なのか「別の積極的な方法」なのかで、結論の意味はまったく違ってきます。

このページでは、以下の約束で書き進めます。研究結果は「〜という報告がある」「〜が示唆されている」と書き、「治る」「効く」とは言い切らない。出典が確かな文献だけを挙げ、確かでないものは挙げない。そして、効果が示されていないことや否定的な報告も、同じ重さで書く。これは瞑想を教え、研究してきた者としての誠実さであると同時に、瞑想を長く続けてきた者として、瞑想が誇張によって消費されることを望まないからです。

示されていること(一)— ストレス・不安・抑うつ症状への中程度の効果

瞑想の効果について最もよく引用される研究の一つが、ゴヤルらが2014年に『JAMA Internal Medicine』に発表した系統的レビューとメタ分析です(Goyal et al., 2014)。メタ分析(複数の研究の結果を統計的に統合して全体の傾向を見る方法)としては、瞑想研究の中でも設計の厳しさで知られています。

この研究は、無作為化比較試験(参加者をくじ引きのように二群に分けて比べる、最も信頼される研究方法)のうち、比較対象として「何もしない」ではなく「別の積極的な働きかけ」を置いたものだけを選び、約3,500人分のデータを統合しました。結果として、マインドフルネス瞑想のプログラムについて、不安、抑うつ、痛みの改善に「中程度(moderate)」の効果の証拠があると報告しています。効果量は、不安については8週間時点で約0.38、抑うつについては約0.30と、統計的な慣習では小から中程度にあたる値でした。ストレスや生活の質(QOL)の向上については、証拠の確かさはより低い「低い(low)」水準とされています。

この結果の読み方には注意が必要です。「中程度の効果」とは、劇的な変化ではなく、積極的な比較対象と比べても一定の差が見られた、という意味です。そして同じ研究は、瞑想プログラムが薬物療法、運動、その他の行動療法よりも優れているという証拠は見つからなかった、とも述べています。つまり、瞑想は不安や抑うつの症状に対して、他の確立した方法と同じ程度には役立つ可能性がある、というのが、この研究から言える正直な範囲です。

ストレスや不安との付き合い方については、 ストレスと瞑想 と 不安・緊張と瞑想 で、研究と実践の両面から書いています。抑うつ状態にある方は、 うつ状態と瞑想 を先に読み、瞑想を医療の代わりにしないことを確かめてください。

示されていること(二)— 注意と脳の構造・機能

もう一つの研究の柱は、瞑想が注意の働きや脳にどう関わるかを調べたものです。タン、ヘルツェル、ポズナーが2015年に『Nature Reviews Neuroscience』に発表した総説(Tang, Hölzel & Posner, 2015)は、マインドフルネス瞑想の神経科学的研究をまとめ、注意の制御、感情の調整、自己認識という三つの領域で、瞑想の実践に関連した脳の活動や構造の変化を報告する研究が蓄積していることを示しました。たとえば、注意の制御に関わる前帯状皮質、感情の調整に関わる前頭前野と扁桃体、自己認識に関わる領域などで、瞑想経験者と非経験者の違いや、訓練前後の変化を報告する研究があります。

ヘルツェルらが2011年に発表した研究では、8週間のマインドフルネスのプログラムを受けた群で、記憶や感情の調整に関わる脳の領域において灰白質の密度が増えたという報告もあります(Hölzel et al., 2011)。「瞑想で脳が変わる」と言われるとき、しばしば引かれるのがこの種の研究です。

ただし、この総説自体が強調している注意点があります。多くの研究は参加者の数が少なく、瞑想をする人としない人を一時点で比べる設計(横断研究)が中心で、瞑想を始める前からの違いなのか、瞑想によって生じた違いなのかを区別しにくいということです。また、比較対象に「別の積極的な活動」を置いた研究はまだ限られており、脳の変化が瞑想に特有のものなのか、何か新しい活動に集中的に取り組むこと一般に伴うものなのかは、十分に分かっていません。著者たちは、より厳密な設計の研究が必要だと述べています。

ですから、「瞑想が脳を変える」という表現は、研究の報告を言い換えたものとしては誇張です。「瞑想の実践に関連して、注意や感情の調整に関わる脳の活動や構造に違いが見られるという報告が蓄積している。ただし因果関係と瞑想特有性の検証はこれからである」というのが、この時点での正確な言い方になります。 瞑想と脳 と 集中力と瞑想 で、もう少し詳しく扱っています。

示されていないこと(一)— 万能ではなく、医療の代わりにならない

ここからは、示されていないこと、誇張されがちなことを書きます。

第一に、瞑想は万能ではありません。先のメタ分析が効果の証拠を見出したのは、不安・抑うつ・痛みの三つの領域についてであり、しかも中程度でした。食欲、睡眠、体重、薬物使用、注意力などについては、十分な証拠が見出されなかったか、研究が少なすぎて判断できないとされています。「瞑想であらゆる不調が整う」という言い方は、研究からは出てきません。

第二に、瞑想は医療の代わりになりません。うつ病、不安障害、慢性疾患などの診断を受けている方が、治療を中断して瞑想に置き換えることを、どの研究も勧めていません。研究が示しているのは、既存の治療と並行して、あるいは治療の補助として、瞑想が役立つ可能性があるということです。私自身、瞑想は宗教の儀式でも医療でもなく、人生後半を整える実践だと考えています。体や心の不調で医療を必要としている方は、まず医療にかかってください。 病と向き合うときの瞑想 に、病を抱える方への向き合い方を書きました。

第三に、瞑想が他の方法より優れているとは示されていません。運動、睡眠の改善、人とのつながり、カウンセリング、薬物療法など、心の健康に役立つ方法は多くあり、瞑想はその一つです。瞑想が特別に優れた方法だという証拠はなく、むしろ複数の方法が組み合わさったときに生活が整いやすい、というのが実践的な実感です。

示されていないこと(二)— 効果量は中程度、研究の質にばらつき

第四に、効果の大きさについて。「中程度」という言葉は、研究の文脈では「無視できないが、劇的でもない」という意味です。一人ひとりの体験に置き換えると、「以前より少し楽になった」「波が少し穏やかになった」という程度の変化が、集団の平均として確認された、ということになります。瞑想を始めて二週間で人生が変わる、という話は、研究からは支持されません。 瞑想の効果を感じないのはなぜか では、効果を感じられないと悩む方へ、この「中程度」の意味を実践の側から説明しています。

第五に、研究の質について。瞑想研究は2000年代以降に急増しましたが、その多くは参加者が少なく、比較対象が弱く、効果を測る指標が自己報告(本人が「よくなった」と答える)に頼っているという限界を抱えています。瞑想を行っている人は瞑想に期待を持っているため、期待そのものが自己報告を押し上げる可能性もあります。さらに、効果が出なかった研究は発表されにくいという「出版バイアス」も指摘されています。ゴヤルらのメタ分析が厳しい基準で研究を選んだのは、まさにこうした問題を避けるためであり、その結果として効果の見積もりが、より緩い基準の研究よりも控えめになっています。

第六に、宣伝と研究の落差について。企業の研修やアプリの宣伝では、「科学的に証明された」という言葉がしばしば使われます。しかし「証明」という言葉は、研究者自身はめったに使いません。研究が示すのは「証拠の蓄積」であり、その確かさには段階があります。「科学的に証明された瞑想の効果」という言い回しに出会ったら、どの研究が、どの指標で、どの程度の効果を、どんな比較対象に対して示したのか、と問い直すことを勧めます。

示されていないこと(三)— 有害事象の報告

第七に、瞑想には不快な体験や有害な反応の報告があるということです。これは効果の話と同じ重さで書かれるべきことですが、一般の瞑想の解説では省かれがちです。

ブラウン大学のウィロビー・ブリットンらの研究グループは、瞑想の実践者を対象に、瞑想に関連して生じた困難な体験を聞き取り調査し、2017年に『PLoS ONE』で報告しました(Lindahl et al., 2017)。そこでは、不安や恐怖の高まり、感覚や知覚の変化、現実感の喪失、感情の麻痺、過去のつらい記憶の再浮上など、多様な体験が記録されています。これらは瞑想を長く深く行った人だけでなく、初心者にも起きており、中には日常生活に支障が出た例もありました。ブリットンは2019年の論文で、マインドフルネスの量と効果の関係は単純な「多いほどよい」ではなく、ちょうどよい中間がある可能性を論じています(Britton, 2019)。

この報告をもって「瞑想は危険だ」と結論づけるのも、また誇張です。重要なのは、瞑想が心と脳に働きかける実践である以上、よい方向だけでなく思いがけない方向への反応も起こりうる、という当たり前の事実を認めることです。仏教の伝統はこのことを古くから知っており、禅では「魔境(まきょう)」、禅病という言葉で、瞑想中に起きる異常な体験や心身の不調を記録し、師が弟子を見守る仕組みを備えてきました。私の理解では、魔境や禅病は神秘的な現象ではなく、脳が及ぼす反応です。過度な瞑想はやめること、酷い場合は心療内科などを受診することが、現代における正しい対処です。 瞑想の危険性 — 魔境・禅病とは何か、 瞑想で不安や恐怖が強くなるとき、 瞑想のやりすぎ — 過度な瞑想の弊害 に、具体的な対処を書いています。

とくに、心理的に不安定な時期にある方、トラウマ(心的外傷)を抱えている方は、一人で長時間の瞑想を始めることを控え、専門家の支えのもとで取り組むことを勧めます。看護・介護・心理の現場で瞑想を勧める立場の方には、効果だけでなくこの点も必ず伝えていただきたいと思います。 看護師・介護職のための瞑想 と 心理職・カウンセラーと瞑想 を参照してください。

仏教は瞑想の「効果」をどう考えてきたか

ここまで科学の側から効果を整理してきましたが、仏教の瞑想の伝統が効果という言葉をどう見てきたか、一つの視点として一段落添えておきます。

仏教は、瞑想の効果を否定してきたわけではありません。経典には、禅定(ぜんじょう:心を一点に定めた状態)の各段階で心にどんな安らぎが現れるかが具体的に記されており、心が静まることの価値ははっきり認められています。しかし同時に、仏教は瞑想の「効果を求める心」そのものを注意深く見てきました。安らぎを求めて座ると、安らぎが来ないときに苦しみが生まれる。効果を測ろうとすると、測る自分と測られる自分に分かれて、心は静まらない。瞑想は、効果を求めることを手放したときにはじめて深まる、という逆説を、仏教は繰り返し語ってきました。

密教の観法についてもう一つ言えば、そこで目指されているのは「ストレスが減る」ことではなく、身・口・意の三密を仏の働きと重ねることです。それは効果の有無で測るものではなく、生き方の方向を定めることに近い。科学的研究が測っている指標は、仏教が瞑想に見てきた価値の一部を切り取ったものであり、切り取られた部分だけが瞑想のすべてだと思うと、瞑想は小さくなってしまいます。 瞑想と後悔のない生き方 — 康照の瞑想観 で、私がどこを見て座っているかを書きました。

私は密教と量子物理学の接点にも関心を持ち、「世界観の対話」として語ることがあります。ただし、それは科学的な根拠を主張するものではなく、二つの世界観を並べて眺める楽しみの話です。 密教と量子物理学 は、その前提で読んでください。

効果を自分で確かめるには — 測らずに、観る

研究の話を読んで「結局、自分にはどうなのか」と思われる方へ、実践の側から一つだけ提案します。

効果を確かめようとして、毎日「今日は落ち着いたか」「集中できたか」と採点するのは、お勧めしません。採点は期待を生み、期待は失望を生み、失望は瞑想をやめる理由になります。代わりに、三か月ほど続けた頃に、ふと振り返ってみてください。怒りが湧いてから収まるまでの時間が少し短くなった。眠る前に頭の中の騒がしさが少し減った。人の話を最後まで聞けるようになった。そういう小さな変化に、あとから気づくことがあります。それが、研究が「中程度の効果」と呼んでいるものの、一人の人間の中での姿です。

変化を感じないとしても、それは失敗ではありません。瞑想の効果は、座っている時間の中ではなく、座っていない時間の中に現れることが多いからです。私自身、短い日は10分、長い日は60分と座り続けていますが、座る前と後で何かが劇的に変わることは、ほとんどありません。それでも続けているのは、効果を感じるためではなく、整えるためです。 瞑想がうまくできているか分からない と 瞑想を習慣にする方法 が、続け方の支えになるはずです。

康照から、ひとこと

瞑想の効果について、私は少し複雑な気持ちでいます。

科学が瞑想を調べてくれたおかげで、
宗教に縁のない多くの人が瞑想に触れられるようになりました。
それは、本当にありがたいことだと思っています。

けれど同時に、「効果」という言葉が瞑想の入口に貼られることで、
効果を感じられない人が「自分はだめだ」と離れていくのも見てきました。

私は、効果を否定したいのではありません。
むしろ、効果を求めずに座った先に、
研究では測れない何かが残ることを、信じているだけです。

息を数える。
数え損ねる。
また一から数える。

その繰り返しが、何かを「よくする」のかどうか、私には断言できません。
ただ、その時間があるおかげで、
私は私の人生を、少し丁寧に扱えているのではないかと感じています。

効果があるかないか、ではなく、
整っているかどうか。
そういう問いの立て方もあるのではないでしょうか。

よくある質問

瞑想に科学的根拠はありますか

あります。ただし範囲は限られています。2014年のメタ分析(Goyal et al.)は、マインドフルネス瞑想のプログラムが不安・抑うつ・痛みの軽減に中程度の効果を持つという証拠を報告しています。注意や脳の働きとの関連を示す研究も蓄積しています。一方で、万能であること、薬や運動より優れていることは示されておらず、研究の質にもばらつきがあります。

瞑想はどのくらい続けると効果が出ますか

研究の多くは8週間のプログラムを単位にしており、8週間時点での効果が報告されています。ただし、個人差が大きく、効果を感じないまま続ける人も少なくありません。実践の側からは、三か月ほど続けてから振り返ることを勧めています。毎日の採点はせず、あとから気づく小さな変化を目安にしてください。 瞑想は何分やればいいか に時間の目安を書きました。

瞑想でうつ病や不安障害は治りますか

「治る」とは言えません。研究が示しているのは、既存の治療と並行して行った場合に症状の軽減に役立つ可能性がある、という範囲です。診断を受けている方は、治療を中断せず、主治医と相談の上で瞑想を補助として取り入れることを勧めます。 うつ状態と瞑想 を先にお読みください。

瞑想に副作用はありますか

不快な体験や有害な反応の報告があります。不安や恐怖の高まり、感覚の変化、つらい記憶の再浮上などが、初心者を含めて記録されています(Lindahl et al., 2017)。多くは一時的ですが、日常に支障が出る場合もあります。過度な瞑想はやめ、酷い場合は心療内科などを受診してください。 瞑想の危険性 — 魔境・禅病とは何か に詳しく書いています。

瞑想で脳が変わるというのは本当ですか

瞑想の実践に関連して、注意や感情の調整に関わる脳の領域の活動や構造に違いが見られるという報告は蓄積しています(Tang, Hölzel & Posner, 2015)。ただし、参加者数が少ない研究や、瞑想前からの違いを区別できない設計の研究が多く、因果関係と瞑想特有の効果かどうかはまだ検証の途中です。「脳が変わる」と断言するのは、現時点では誇張です。 瞑想と脳 を参照してください。

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参考文献

  • Goyal, M., Singh, S., Sibinga, E. M. S., et al. (2014). Meditation programs for psychological stress and well-being: A systematic review and meta-analysis. JAMA Internal Medicine, 174(3), 357–368.
  • Tang, Y.-Y., Hölzel, B. K., & Posner, M. I. (2015). The neuroscience of mindfulness meditation. Nature Reviews Neuroscience, 16(4), 213–225.
  • Hölzel, B. K., Carmody, J., Vangel, M., et al. (2011). Mindfulness practice leads to increases in regional brain gray matter density. Psychiatry Research: Neuroimaging, 191(1), 36–43.
  • Lindahl, J. R., Fisher, N. E., Cooper, D. J., Rosen, R. K., & Britton, W. B. (2017). The varieties of contemplative experience: A mixed-methods study of meditation-related challenges in Western Buddhists. PLoS ONE, 12(5), e0176239.
  • Britton, W. B. (2019). Can mindfulness be too much of a good thing? The value of a middle way. Current Opinion in Psychology, 28, 159–165.
  • Kabat-Zinn, J. (1990). Full Catastrophe Living. Delacorte Press.