瞑想と医療 — 補完代替医療としての位置づけ

効果・目的別

瞑想は、現代の医療の中では「補完代替医療」あるいは「統合医療」の一つとして位置づけられ、通常の治療と組み合わせて用いられることがあります。
一方で、瞑想は治療の代わりにはならず、病気を治すものとして扱われてはいません。
このページでは、瞑想が医療の中でどう扱われているかを、米国の公的機関の分類、研究の到達点、日本の状況を手がかりに、断定を避けて整理します。

補完代替医療・統合医療とは何か

まず、言葉を整理します。

補完代替医療(CAM) は、通常の医療(近代西洋医学)の枠の外にある、さまざまな健康法や療法の総称です(Complementary and Alternative Medicine)。「補完」は通常の医療と一緒に用いること、「代替」は通常の医療の代わりに用いることを指します。漢方、鍼灸、ヨガ、瞑想、マッサージ、サプリメントなどが、この中に含まれます。

統合医療 は、通常の医療を前提とした上で、根拠のある補完的な方法を、医師の管理のもとで組み合わせる考え方です。日本では、厚生労働省の検討会が、統合医療を「近代西洋医学を前提として、これに相補・代替療法や伝統医学等を組み合わせて、さらに生活の質(QOL)を向上させる医療」という趣旨で整理しています。

大切なのは、「補完」と「代替」の違いです。瞑想は、公的機関や研究の文脈では、通常の医療と一緒に用いる「補完」として扱われており、医療の「代替」として扱われてはいません。

米国 NCCIH の分類 — 瞑想はどこに置かれているか

米国には、国立衛生研究所(NIH)の一部門として、国立補完統合衛生センター(NCCIH。National Center for Complementary and Integrative Health)があります。補完的な健康法を科学的に研究する公的機関で、かつての名称「国立補完代替医療センター(NCCAM)」から「代替」が消え「統合」に変わったこと自体が、位置づけの移り変わりを示しています。

NCCIH は、補完的な健康法を、大きく「栄養的なもの(サプリメント・食事法など)」「心理的なもの(瞑想・マインドフルネス・催眠など)」「身体的なもの(マッサージ・脊椎の手技など)」、およびそれらの組み合わせ(ヨガ、太極拳など)に分類しています。瞑想は「心理的なアプローチ」に置かれ、以前の分類では「心身の実践(mind and body practices)」と呼ばれていました。

NCCIH は、瞑想について、不安、抑うつ、痛み、不眠などへの影響を調べた研究を紹介する一方で、研究の質や規模にばらつきがあることも併せて示しています。公的機関の姿勢は、「有望だが、慎重に」というものだと言えます。

MBSR — 瞑想が医療に入ってきた道筋

瞑想が医療の中で扱われるようになった最も大きなきっかけは、マインドフルネス・ストレス低減法(MBSR。Mindfulness-Based Stress Reduction)です。

MBSR は、1979年、ジョン・カバットジンが米国マサチューセッツ大学医療センターで始めた、8週間のプログラムです。仏教の気づき(サティ)の瞑想を土台にしながら宗教的な要素を取り除き、慢性の痛みやストレスを抱える患者が病院の中で取り組める形に整えたものです。カバットジンは1982年に慢性疼痛の患者に対する結果を医学誌に報告し、1990年の著書『Full Catastrophe Living』(邦訳『マインドフルネスストレス低減法』)でプログラムの全体を公開しました。

MBSR が医療の中に受け入れられたのは、宗教色を排したこと、8週間という定まった形式で再現できるようにしたこと、効果を研究で検証する姿勢を最初から持っていたこと、この三つが大きいと考えられます。この型は、その後、うつ病の再発予防を目的とするマインドフルネス認知療法(MBCT)などの派生プログラムを生みました。MBCT については、英国の国立医療技術評価機構(NICE)が、うつ病を繰り返してきた人の再発予防の選択肢として、診療ガイドラインで言及しています。

マインドフルネス瞑想と仏教の関係については マインドフルネス瞑想とは — 仏教との関係 で、瞑想と脳の研究については 瞑想と脳 — 研究で分かったこと で、それぞれ詳しく述べています。

研究は何を示し、何を示していないか

最もよく引かれるのは、2014年に米国医師会の内科系の雑誌に掲載された、ゴヤルらによる系統的レビューとメタ分析です。瞑想プログラムに関する臨床試験を集めて分析し、マインドフルネス瞑想のプログラムについて、不安、抑うつ、痛みの改善に「中程度の根拠」があると報告しました。一方で、ストレスや生活の質については根拠が「低い」とし、瞑想が薬物療法や運動など他の積極的な治療より優れているという根拠は見いだせなかった、と述べています。

まとめると、不安、抑うつ、痛みについては瞑想プログラムが一定の助けになることが示唆されているが、効果の大きさは中程度で他の治療に取って代わるほどではなく、「瞑想で治る」と言える段階ではない、ということになります。

脳科学の側からは、瞑想が注意の制御、感情の調整、自己認識に関わる脳の領域に変化をもたらすという研究が蓄積されていますが、その多くがサンプルの小ささや方法の限界を自ら指摘しており、慎重な読み方が求められます。また、瞑想の実践者の一部に、不安の増大や感覚の変化など困難な体験が生じることを調べた研究もあり、「瞑想には副作用がない」とは言えないことが示されています。このサイトでは 瞑想の危険性 — 魔境・禅病とは何か と 瞑想のやりすぎ — 過度な瞑想の弊害 でこの点を扱っています。

日本の状況

日本では、瞑想が医療の中で扱われる動きは、欧米に比べてゆるやかですが、進んでいます。厚生労働省は「統合医療」情報発信サイト(eJIM)を運営しており、瞑想やマインドフルネスについて、NCCIH の情報をもとにした解説が掲載されています。公的な情報源として、まず参照してよいものです。医療の現場では、一部の医療機関や心理の領域で MBSR や MBCT を取り入れる試みが行われていますが、保険診療として広く定着しているわけではなく、実施している機関は限られています。

私自身は、一般社団法人 仏教補完代替医療機構で、各種の瞑想法について研究や講義を行っています。瞑想を医療の代わりにするためではなく、瞑想という古い実践を、現代の医療や研究の言葉と照らし合わせて位置づけるためです。

治療の代替ではない — 医師との相談

ここまで述べてきたことから、はっきりしているのは、瞑想は治療の代わりにはならない、ということです。

薬をやめない — 処方されている薬を、瞑想を始めたからといって自己判断でやめたり減らしたりしないでください。継続的な治療が必要な病気では、薬の中断が病状を悪化させることがあります。

診断と治療は医療の領域 — 気分の落ち込み、眠れない、動悸がするといった症状があるとき、瞑想で様子を見るのではなく、まず医療機関で診てもらってください。瞑想は、診断と治療の上で、補助として取り組むものです。

主治医に伝える — 治療中の方が瞑想を始めるときは、主治医にその旨を伝えておくことをお勧めします。うつ状態が重いとき、強い不安やパニックがあるときなど、瞑想が症状を強めることがあると指摘されている時期もあります。うつ状態と瞑想 — できること、医療に委ねること と 病と向き合うときの瞑想 も参考にしてください。

「治る」と言う人に注意 — 瞑想で病気が治る、薬が要らなくなる、と言い切る情報や人には、距離を置いてください。研究が示しているのは、「一定の助けになることが示唆されている」までです。

瞑想ができることは、病気を治すことではなく、病気と共にある日々の心の持ちようを、少し整えることです。小さなことに見えますが、長い治療の中では、小さくないことだと私は思っています。

康照から、ひとこと

瞑想は病気を治しますか、と聞かれることがあります。
私は、「治しません」と答えています。
その上で、「でも、病気と一緒に暮らす日々を、少し整えることはできるかもしれません」と付け加えます。

瞑想を医療と結びつけて語ることに、私は慎重でいたいと思っています。
期待させすぎると、必要な治療から人を遠ざけてしまうからです。
瞑想は、治療の代わりではありません。
むしろ、治療を受けながら、不安や焦りに飲まれずにいるための、小さな足場ではないでしょうか。

薬を飲みながら、医師と相談しながら、座る。
それで十分だと思っています。

よくある質問

瞑想は、病院で受けられますか。

一部の医療機関や心理の領域で、MBSR や MBCT といったプログラムを取り入れている例がありますが、実施している機関は限られています。かかりつけの医師や、地域の精神保健福祉センターなどに相談してみてください。

薬を飲みながら瞑想しても大丈夫ですか。

病状によっては瞑想が向かない時期があります。主治医に瞑想を始める旨を伝え、了解を得た上で取り組むことをお勧めします。薬を自己判断でやめることは、絶対にしないでください。

瞑想は「科学的に効果が証明されている」と言ってよいですか。

一部の領域で「一定の根拠がある」とされていますが、「証明された」と言える段階ではありません。研究の質にばらつきがあり、効果の大きさも中程度です。また、一部の人に困難な体験が生じることも研究で示されています。公的機関の情報を参照しながら、過大な期待も過小な評価もせずに向き合うのがよいと思います。

関連するページ

参考文献

  • Jon Kabat-Zinn, Full Catastrophe Living, 1990, Delacorte Press(邦訳『マインドフルネスストレス低減法』北大路書房)
  • Jon Kabat-Zinn, “An outpatient program in behavioral medicine for chronic pain patients based on the practice of mindfulness meditation”, General Hospital Psychiatry, 4(1), 1982
  • Madhav Goyal et al., “Meditation Programs for Psychological Stress and Well-being: A Systematic Review and Meta-analysis”, JAMA Internal Medicine, 174(3), 2014
  • Yi-Yuan Tang, Britta K. Hölzel, Michael I. Posner, “The neuroscience of mindfulness meditation”, Nature Reviews Neuroscience, 16, 2015
  • Jared R. Lindahl et al., “The varieties of contemplative experience: A mixed-methods study of meditation-related challenges in Western Buddhists”, PLOS ONE, 12(5), 2017
  • National Institute for Health and Care Excellence (NICE), Depression in adults: treatment and management (NG222), 2022
  • 厚生労働省「統合医療」のあり方に関する検討会「これまでの議論の整理」2013年
  • 厚生労働省「統合医療」情報発信サイト(eJIM)
  • National Center for Complementary and Integrative Health (NCCIH), “Complementary, Alternative, or Integrative Health: What’s In a Name?”