瞑想と免疫・体調 — 研究が示していること、まだ分からないこと

効果・目的別

瞑想が免疫を高めるかどうかは、研究はあるものの、結論は定まっていません。
確からしいのは、瞑想がストレスの自覚を和らげる方向に働くことで、ストレスは体調に影響します。その経路を通じて、体調が整う人がいることは十分に考えられます。
ただし、瞑想は病気の予防や治療の代わりにはなりません。「瞑想しているから大丈夫」とは考えないでください。

「瞑想で免疫力が上がる」は本当か

「瞑想で免疫力が上がる」という言葉は、本や動画でよく見かけます。期待したくなる言葉ですが、私はこの言い方をしていません。研究の現状が、そこまで言い切れる段階にないからです。

まず、「免疫力」という言葉自体が、医学では一つの数値で測れるものではありません。免疫には、白血球の数や種類、抗体の量、炎症に関わる物質の濃度など、多くの指標があり、それぞれが別の働きをしています。「免疫力が上がる」と一言で言うとき、どの指標のことを指しているのかは、たいてい曖昧です。

そのうえで、瞑想と免疫の指標との関係を調べた研究は、確かに存在します。このページでは、その研究が何を示し、何をまだ示していないのかを、できるだけ正確に書きます。

研究で分かっていること

瞑想と免疫に関する研究で、比較的よく知られているものを挙げます。

ワクチン接種後の抗体反応
Davidson らが2003年に発表した研究では、8週間のマインドフルネスストレス低減法(MBSR)を受けた群と、受けなかった群で、インフルエンザワクチン接種後の抗体の量を比べました。瞑想を受けた群のほうが抗体の増え方が大きかったと報告されています。ただし、参加者は数十人規模で、健康な成人を対象にした一つの研究であり、これだけで一般化はできません。

複数の研究をまとめた検討
Black と Slavich が2016年に発表した系統的レビューは、マインドフルネス瞑想と免疫系の指標を調べた無作為化比較試験を集めて検討しました。炎症に関わる指標や細胞性免疫の一部で、瞑想群に好ましい方向の変化が見られた研究があると報告していますが、同時に、研究の数が少なく、質にばらつきがあり、結論を出すには証拠が不十分だと述べています。

ストレスと心理面への影響
Goyal らが2014年に発表したメタ分析は、瞑想プログラムが不安、抑うつ、痛みに対して中程度の効果を示したと報告しています。これは免疫を直接測ったものではありませんが、ストレスの軽減という経路を通じて、体調に影響する可能性を考えるうえで参照されます。

まとめると、「瞑想と免疫の指標に関係があることを示唆する報告はある。しかし、研究の数と質から、結論は定まっていない」というのが、本稿執筆時点での正直なところです。

なぜ瞑想が体調に関わると考えられるのか

結論は定まっていないとしても、瞑想が体調に関わる経路として、研究者が想定している筋道はあります。それは、ストレスを介した経路です。

長く続くストレスは、自律神経のうち交感神経を優位にし、ストレスホルモンの分泌を長引かせ、慢性的な炎症の状態をつくると考えられています。これらは、免疫の働きにも影響します。瞑想がストレスの自覚を和らげ、副交感神経の働きを助けるなら、その先で免疫の指標が動くことは、理屈としては考えられます。

ただ、ここで注意したいのは、この筋道は「ありうる」であって「確かめられた」ではないことです。瞑想が自律神経に与える影響については 自律神経と瞑想 に、ストレスとの関係は ストレスと瞑想 に、脳への影響は 瞑想と脳 — 研究で分かったこと に書きました。いずれも、「〜という報告がある」の範囲で読んでください。

瞑想で体調が整うと感じる人がいるのはなぜか

研究の話とは別に、瞑想を続けると体調がよくなった、という実感を語る人は少なくありません。これは、免疫が上がったという証拠ではありませんが、根拠のない思い込みでもないと私は考えています。

瞑想を続けると、次のような変化が起きやすいからです。

  • 睡眠が整う。寝る前に心が静まり、寝つきがよくなる人がいます(睡眠・不眠と瞑想)。
  • 体の信号に気づきやすくなる。疲れ、冷え、食べすぎに早く気づき、無理をする前に休むようになります。
  • 呼吸が深くなる。浅く速い呼吸が、ゆっくりとした呼吸に変わります。
  • 心配や怒りに費やす時間が減り、体の緊張が緩みます。

これらは、いわば生活の土台が整うことです。土台が整えば体調もよくなる、というのは、特別な仕組みを持ち出さなくても説明できることです。「瞑想が免疫を上げた」と言うより、「瞑想で生活が整い、結果として体調がよくなった」と言うほうが、実感に近いのではないでしょうか。

瞑想にできないこと — 医療の代わりにしない

このページで一番大切なことを書きます。瞑想は、病気の予防や治療の代わりにはなりません。

  • 感染症を防ぐのは、手洗い、睡眠、栄養、必要なワクチンです。瞑想はそれらを補うものであって、置き換えるものではありません。
  • 体調不良が続くとき、「瞑想で整えよう」と考えて受診を遅らせないでください。まず医療機関で原因を調べることが先です。
  • 持病の治療中の方は、瞑想を始めることを主治医に伝えてください。瞑想が治療の妨げになることはまれですが、自己判断で薬を減らす、通院をやめる、といったことは絶対にしないでください。
  • 「瞑想で免疫が上がるから病気にならない」という考えは、根拠がなく、危険です。

私は瞑想を教え、研究してきた者であり、医療者ではありません。瞑想の実践と、医療の知識は別のものです。仏教補完代替医療機構で各種の瞑想法の研究や講義に関わっていますが、そこでも「補完」であって「代替」ではない、という立場は変わりません。瞑想は、医療と並んで人を支えるものです。病と向き合う場面での瞑想については 病と向き合うときの瞑想 に書きました。

仏教は体をどう見てきたか

仏教の瞑想は、もともと体調をよくするために生まれたものではありません。苦しみの仕組みを見抜き、そこから自由になるための実践です。ただ、体を無視してきたわけでもありません。

釈尊は、出家後に極端な苦行で体を痛めつけ、それでは悟りに至らないと知って、食事を取り、体を回復させてから瞑想に入ったと伝えられています。体を壊すほどの修行は、仏教の道ではない、という原点がここにあります。経典には、修行者の健康を保つための、食事、睡眠、歩行についての指針が繰り返し説かれています。

密教でも、身(からだ)・口(ことば)・意(こころ)の三密を同時に整えることを基本にしており、心だけを極端に使うことを避ける構造になっています。これは密教に限った知恵ではなく、禅でも、上座部でも、体を調える「調身」が心を調える前提とされてきました。千年以上前の修行者たちも、体が整わなければ心は整わないことを、経験から知っていたのだと思います。

瞑想が体調に与える影響を、現代の研究は測ろうとしています。仏教は、それを数値では語りませんでしたが、「体を調え、息を調え、心を調える」という順序の中に、同じ理解を置いていました。

康照から、ひとこと

私は、瞑想で病気が防げるとは思っていません。
私自身、50歳で心臓の手術を受け、生きて還ってきた人間です。
助けてくれたのは医療でした。
瞑想を始めたのは、その後です。
瞑想が私にくれたのは、免疫ではなく、自分の体の声を聞く時間だったように思います。
疲れていることに気づく。無理をしていることに気づく。それだけで、体はずいぶん楽になるのではないでしょうか。
瞑想は、体を守る盾ではありません。むしろ、体の声に耳を澄ます、静かな習慣だと思っています。

よくある質問

瞑想で風邪をひきにくくなりますか

そう言い切れる研究はありません。ストレスや睡眠が整うことで体調が安定する人はいますが、風邪の予防は手洗いや睡眠、栄養が基本です。瞑想はそれらを置き換えるものではありません。

瞑想で免疫の数値が変わるという研究は信用できますか

報告はありますが、研究の数が少なく、規模も小さいものが多いため、結論は定まっていません。「示唆されている」段階だと理解してください。

持病がありますが、瞑想を始めてもいいですか

多くの場合は問題ありませんが、主治医に伝えたうえで始めてください。瞑想を理由に治療や薬を自己判断で変えることは、しないでください。

体調が悪い日も瞑想したほうがいいですか

無理に坐る必要はありません。横になって呼吸を感じるだけでもよいですし、休むことを優先してかまいません。体調不良が続くときは、瞑想より先に医療機関を受診してください。

瞑想をしているのに体調がよくなりません

瞑想は体調を直接よくするものではありません。体調の原因は医療で調べることが先です。そのうえで、瞑想を睡眠や生活の土台を整える一つの習慣として続けるかどうかを考えてください。

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参考文献

  • Davidson, R. J., Kabat-Zinn, J., et al. (2003). Alterations in brain and immune function produced by mindfulness meditation. Psychosomatic Medicine, 65(4), 564–570.
  • Black, D. S., & Slavich, G. M. (2016). Mindfulness meditation and the immune system: a systematic review of randomized controlled trials. Annals of the New York Academy of Sciences, 1373(1), 13–24.
  • Goyal, M. et al. (2014). Meditation Programs for Psychological Stress and Well-being: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Internal Medicine, 174(3), 357–368.