子どもの瞑想は、大人の瞑想を小さくしたものではなく、「短く、遊びとして、押しつけない」の三つを守った、まったく別の実践です。
1分から3分、息を数える遊びや、音を聴く遊びとして行い、嫌がったらすぐにやめる。この程度で十分で、長く座らせる必要はありません。
子どもに瞑想を教える最も確かな方法は、教えることではなく、親自身が静かに座っている姿を、ときどき見せることだと私は思っています。
子どもに瞑想は必要か
最初に、正直に述べておきます。子どもに瞑想が必要だとは、私は思っていません。
子どもは、大人よりもずっと「いま、ここ」にいます。砂遊びに夢中になっているとき、虫を見つめているとき、子どもの心は、大人が瞑想で取り戻そうとしている状態に、すでにあります。大人が瞑想を必要とするのは、過去の後悔と未来の不安で心がいっぱいになり、「いま」から離れてしまうからです。子どもは、まだそれほど離れていません。
ですから、子どもの瞑想は、「教え込む」ものではなく、「すでにあるものを、少しだけ意識させる」程度のものです。「いま、何が聞こえる?」「息をしてみよう、お腹が動くね」。そのくらいの声かけで十分です。
ただ、現代の子どもは、画面と予定に囲まれ、静かな時間を持ちにくくなっています。また、不安が強い子、落ち着きにくい子にとって、短い静かな時間が助けになることはあります。「必要ではないが、あってもよい」。それが、子どもの瞑想に対する私の基本の見方です。
三つの原則 — 短く、遊びとして、押しつけない
子どもと瞑想を行うとき、守りたい原則は三つです。
短く。大人の瞑想は10分から始めますが、子どもは1分から3分で十分です。長く座らせると、瞑想は「じっとしていなければならない罰」になります。「もう終わり?」と言われるくらいで終えるのがちょうどよいのです。小学校高学年以上なら5分程度まで伸ばせますが、本人が望む場合に限ります。
遊びとして。「瞑想をしよう」と言う必要はありません。「息を数える遊び」「音を探す遊び」「お腹の船を見る遊び」として行います。遊びは、うまくできなくても失敗になりません。瞑想を「できる・できない」の枠に入れないことが大切です。
押しつけない。嫌がったら、すぐにやめます。「毎日やりなさい」とは言いません。親が「これは子どものためになる」と思えば思うほど、子どもには押しつけになります。瞑想は、親の期待を乗せる場ではありません。
この三つに、もう一つ添えるなら、「評価しない」ことです。「上手にできたね」も、実は評価です。評価されると、子どもは次からも評価を気にして座ります。「静かだったね」「気持ちよかった?」くらいで、結果を褒めないようにします。
年齢別の目安
あくまで目安です。子どもの発達には大きな個人差があり、年齢で区切れるものではありません。
3歳から5歳。座る瞑想は向きません。遊びの中で、「音を聴く」「息を感じる」体験をするくらいです。たとえば、寝る前に布団の上で、お腹にぬいぐるみを乗せて、「息で船が上がったり下がったりするね」と一緒に見る。30秒で十分です。
6歳から9歳。1分から3分、一緒に座ることができます。「吐く息で、1、2、3と数えてみよう」「目を閉じて、聞こえる音を三つ見つけてみよう」といった、はっきりした課題があると取り組みやすいです。終わったら「何が聞こえた?」と聞いて、答えをそのまま受け取ります。
10歳から12歳。3分から5分。息を数える数息観の、大人と同じ形ができるようになります。「雑念が浮かんだら、消さなくていい。流して、数に戻る」という大人向けの説明も、この年齢なら伝わります。ただし、本人が望むときだけ行います。
中学生以上。大人とほぼ同じ方法が使えますが、この年齢で最も大切なのは「押しつけない」ことです。親から勧められたことは、それだけで敬遠されます。親が座っている姿を見せ、聞かれたら答える。それ以上は踏み込まないほうが、結果的に残ります。
親子でできる簡単な方法
三つ、紹介します。どれも道具は要りません。
お腹の船。仰向けに寝て、お腹の上に小さなぬいぐるみや手を置きます。息を吸うと船が上がり、吐くと下がる。それを一緒に眺めます。「ゆっくり吐くと、船がゆっくり下りるね」。これだけで、呼吸に意識を向ける瞑想になっています。寝る前に行うと、そのまま眠ってもかまいません。寝ながら瞑想はできるか に書いたとおり、横になった瞑想は、眠ってよいのです。
音を三つ探す。座っても立ってもかまいません。目を閉じて、「聞こえる音を三つ見つけよう」と言います。時計の音、外の車、自分の息。見つけたら、目を開けて、三つを言い合います。これは、注意を外の音に向け、思考から離れる練習で、大人の瞑想では「聴く瞑想」と呼ばれるものです。
息を数える。吐く息に合わせて、心の中で「1、2、3」と数え、10まで行ったら1に戻ります。大人の数息観と同じです。「途中で分からなくなったら、1に戻ればいいよ」と先に伝えておくと、失敗にならずに済みます。1分から始めます。呼吸瞑想・数息観とは をご覧ください。
いずれも、親が一緒に行うことが大切です。子どもだけにやらせて、親が横でスマートフォンを見ていれば、それは瞑想ではなく、指示です。親も目を閉じ、同じように息を数える。親子で同じことをしている、という感覚が、子どもにとっては何より安心です。
学校でのマインドフルネス — 研究が示していること
近年、海外を中心に、学校教育にマインドフルネスを取り入れる試みが広がっています。その効果については、慎重に見る必要があります。
英国で行われた大規模な試験(MYRIAD 試験)では、中学校に相当する年齢の生徒を対象に、学校でのマインドフルネス訓練を通常の授業と比較しましたが、生徒全体の平均では、精神的な健康の改善は確認されなかったと報告されています。小規模な研究で効果を示すものもありますが、研究の質にはばらつきがあり、「学校で瞑想をすれば子どもの心が健康になる」と言える段階ではありません。
この結果は、瞑想が無意味だということではなく、「全員に一律に行う」形が子どもには合いにくいことを示しているのかもしれません。押しつけられた瞑想は、大人にとっても子どもにとっても、効果が薄いのです。このページで「押しつけない」を原則にしているのは、仏教の側の考え方であると同時に、研究の示すところとも矛盾しないと思っています。瞑想の効果 — 科学が示したこと、示していないこと も参考にしてください。
仏教から見た子どもと瞑想
仏教の伝統にも、子どもに瞑想を教えた記録があります。釈尊は、自分の息子であるラーフラが幼い頃に出家した後、年齢に応じて教えを説いたと経典に伝えられています。その中には、呼吸に心を留めることや、地・水・火・風のように広い心を持つことを教える場面があります。教えは、相手の年齢と理解に合わせて、少しずつ、というのが、釈尊の姿勢でした。
また、仏教の修行は、戒・定・慧の順です。戒とは、生活を整えること。子どもにとっての「戒」は、規則ではなく、規則正しい暮らし、安心できる家、食事と睡眠です。それが整っていなければ、定(心を静めること)は成り立ちません。子どもに瞑想を教える前に、子どもの暮らしが安心できるものになっているか。そちらのほうが、ずっと大切です。
もう一つ、仏教には「身をもって示す」という考え方があります。釈尊の弟子たちは、釈尊の言葉だけでなく、歩き方や座り方を見て学んだとされます。子どもも同じです。親が「瞑想をしなさい」と言うより、親が毎日、静かに座っている姿を見せるほうが、ずっと深く伝わります。教えなくても、いつか、「あれは何をしていたの?」と聞いてくる。そのときが、教えるときです。
康照から、ひとこと
子どもに瞑想を教える、ということに、私は少し慎重です。
子どもは、もう「いま」にいます。
教えなければならないのは、むしろ大人のほうではないでしょうか。
もし子どもに何か伝えるとすれば、座り方ではなく、座っている姿だと思っています。
朝、親が静かに座っている。
それを、何年も見て育つ。
その記憶は、子どもが大人になり、心がいっぱいになったとき、ふと戻ってくるかもしれません。
「あのとき、親は何をしていたのだろう」と。
そのときに初めて、瞑想は、その子のものになるのだと思います。
急がなくていい。
押しつけなくていい。
座っている姿を、ときどき見せるだけで十分だと思っています。
よくある質問
何歳から瞑想を始められますか。
遊びとしてなら、3歳くらいから「息を感じる」「音を聴く」体験はできます。座って息を数える形は、6歳くらいからが目安です。ただし個人差が大きく、年齢より「本人が嫌がらないか」で判断してください。
落ち着きのない子に、瞑想は効きますか。
「効く」とは言えません。短い静かな時間が助けになる子もいますが、じっとしていること自体が苦痛な子もいます。落ち着きのなさが生活に支障を及ぼしているなら、瞑想ではなく、小児科や専門機関に相談してください。瞑想は、その代わりにはなりません。
子どもが瞑想中にふざけます。どうすればよいですか。
ふざけるのは、遊びとして受け取っている証拠で、悪いことではありません。笑って終わりにして、別の日にまた短く行えば十分です。叱ると、瞑想が「叱られる時間」になります。
学校や塾で瞑想が行われていますが、親として賛成すべきですか。
短時間で、遊びや休憩として行われ、嫌がる子に強制しない形であれば、大きな問題はないと思います。ただし、研究では、学校での一律の訓練に明確な効果は確認されていません。過度な期待はせず、子ども自身がどう感じているかを聞いてあげてください。
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参考文献
- Kuyken W, Ball S, Crane C, et al. “Effectiveness and cost-effectiveness of universal school-based mindfulness training compared with normal school provision in adolescents: the MYRIAD cluster randomised controlled trial.” Evidence-Based Mental Health, 2022.
- 『ラーフラ教誡経』(中部経典。釈尊が息子ラーフラに説いた教えを伝える経典群)


