寝ながら瞑想はできます。仰向けで行う瞑想は実際にあり、ボディスキャンのように仰向けが基本の方法もあります。
ただし、横になると眠りやすいので、集中を深める練習には座る瞑想のほうが向いています。
仰向けで瞑想していて眠ってしまったら、そのまま寝てよい。私はそう伝えています。
「寝ながら」は瞑想として成り立つか
「瞑想は座ってするものではないのか」「横になったら、それはただの休憩ではないのか」という疑問は、もっともだと思います。答えから言えば、横になっていても、息や体に注意を向けているなら瞑想として成り立ちます。瞑想の中身は「注意をどこに置くか」であって、体の向きではないからです。
実際、仰向けで行うことを前提にした瞑想法はいくつもあります。マインドフルネス系のボディスキャンは、仰向けに寝て、足先から頭まで体の感覚を順に観察していく方法で、仰向けが基本の形です。ヨガの終わりに行われるシャヴァーサナ(屍のポーズ)やヨガニドラも、横になって意識を保つ練習です。
一方で、横になることには、座ることにはない難しさがあります。眠ってしまうことです。この一点をどう扱うかで、寝ながらの瞑想の使い方が決まります。
仰向けの瞑想のやり方
仰向けで行う場合の基本を書きます。
- 床か硬めの布団に仰向けになります。柔らかすぎるベッドは体が沈んで眠りやすいので、できれば床にマットや毛布を敷くほうがよいでしょう。
- 足は腰幅ほどに開き、つま先は自然に外に倒します。腰が反って痛む方は、膝の下に丸めたタオルや枕を入れます。
- 腕は体から少し離して、手のひらを上か下、楽なほうに向けて置きます。
- 頭の下は、薄い枕か、何も敷かないかのどちらかです。高い枕は顎が引けて呼吸が浅くなります。
- 目は閉じて構いません。眠気が出やすいなら、薄く開けて天井を見ます。
- 息を数えるか、体の感覚を足先から順にたどるか、どちらかを行います。
座る瞑想と違い、背骨を立てる努力がいらないので、体の緊張が抜けやすいのが仰向けの長所です。体を支えることに注意を割かずに済むぶん、感覚そのものを観察しやすくなります。腰や膝の痛みで座れない方、病気や怪我で起き上がるのがつらい方にとっては、仰向けが唯一の選択になることもあります。
横向きで行う場合
仰向けだと腰が痛む方、妊娠中の方などは、横向きでも構いません。右を下にして横になり、頭の下に枕を置き、上の脚を少し前に出して安定させます。
仏教では、釈尊が最期に横たわった姿として、右脇を下にして横になる形が涅槃像に表されています。この形は「獅子臥(ししが)」とも呼ばれ、修行者が休むときの姿勢として古くから伝えられてきました。右を下にする理由については諸説あり、ここで断定はしませんが、横になるときにも「ただ崩れて寝る」のではなく「姿勢を保って休む」という意識が仏教にあった、ということは言えると思います。
眠ってしまう問題と、二つの使い分け
仰向けの瞑想で誰もが経験するのが、途中で眠ってしまうことです。これをどう考えるかで、使い方が二つに分かれます。
一つは、「眠ってはいけない」と考える使い方です。ボディスキャンのように、意識を保ったまま体を観察することが目的の場合、眠ってしまえば練習にはなりません。この場合は、眠気の出にくい時間帯(朝や日中)に行う、目を薄く開ける、床の硬いところで行う、といった工夫で眠りを避けます。それでも眠ってしまうなら、その日は体が休息を求めているのだと受け取って、無理に続けないことです。
もう一つは、「眠ってもよい」と割り切る使い方です。私は、仰向けで瞑想していて眠くなったら、そのまま寝てよいと伝えています。寝る前に横になり、息を数えながら眠りに入る。瞑想として深まるものではありませんが、頭の中の考えごとを引きずったまま眠るより、息に注意を置いて眠りに入るほうが、一日の終わり方としては整っています。
大事なのは、どちらの使い方をしているのかを、始める前に自分で決めておくことです。「今日は観察の練習」なら眠らない工夫をする。「今日は眠りに入るための瞑想」なら、眠ったら眠ったでよい。決めずに始めると、眠るたびに「また失敗した」と感じることになります。
座る瞑想と仰向けの瞑想の違い
では、座る瞑想と仰向けの瞑想は、何が違うのでしょうか。
座る瞑想は、背骨を立てて体を保つことそのものが、心を保つ支えになります。体がわずかに崩れると心も緩む、心が緩むと体も崩れる。この連動を使って、集中を深めていきます。サマタ(止・一点に心を留める瞑想)のように集中を養う瞑想には、座る形のほうが向いています。
仰向けの瞑想は、体を保つ力を使わないぶん、緊張が抜けやすく、体の感覚が観察しやすくなります。ただ、集中を深める支えがないので、注意は緩みやすい。観察や休息に向き、集中を鍛えるには向かない、と言えます。
ですから、毎日の瞑想の中心は座る形で行い、仰向けは「体の観察をする日」「寝る前に整える時間」「座れない体調のとき」に使う、という組み立てが現実的だと思います。姿勢の基本は瞑想の正しい姿勢 — 椅子でも床でもに書きました。
仏教の瞑想における「臥」
仏教では、修行者の日常の姿を「行住坐臥(ぎょうじゅうざが)」と言います。歩くこと、立ち止まること、座ること、横になること。この四つすべてが修行の場である、という考え方です。「臥」、つまり横になることも、その一つに数えられています。
坐が特別で臥が劣る、ということではありません。坐は集中を深めるのに向き、臥は休息の中で意識を保つのに向く。それぞれの姿勢に、それぞれの修行がある。四つの姿勢のどれにいても心を整えておく、というのが、行住坐臥という言葉に込められた意味です。
密教の修行でも、体の在り方は身密(しんみつ)として重んじられますが、それは「座っていなければならない」という意味ではなく、体がどんな形であれ、その形を整った状態として引き受ける、ということだと私は理解しています。横になった体で息を数えているとき、その体も、整えようとしている体です。
康照から、ひとこと
私は、仰向けで瞑想していて眠ってしまうことを、失敗だとは思っていません。
横になって、息を数えて、気づいたら朝だった。
それは、瞑想が途中で眠りに変わっただけのことです。
眠らずに観察し続けることが、いつも正しいわけではありません。
むしろ、その日の体が眠りを選んだなら、それに従ってよいのではないでしょうか。
集中を深めたい日は、座ればよい。
整えて眠りたい夜は、横になればよい。
瞑想は、体を苦しめるためのものではないと思っています。
よくある質問
寝ながらの瞑想は、座る瞑想の代わりになりますか
目的によります。体の感覚を観察する練習や、寝る前に整える目的なら、十分に代わりになります。集中を深める練習としては、座る形のほうが向いています。毎日の中心は座る形にして、仰向けを補助に使うとよいでしょう。
ベッドの上で瞑想してもいいですか
構いませんが、柔らかいベッドは体が沈んで眠りやすくなります。眠らずに行いたいなら、床にマットを敷くほうが向いています。眠ってもよいと割り切るなら、ベッドで問題ありません。
腰が痛くて仰向けになれません
膝の下に丸めたタオルや枕を入れて膝を少し曲げると、腰の反りが減って楽になることが多いようです。それでも痛む場合は横向きで行ってください。痛みが続くなら、瞑想の工夫より先に医師に相談してください。
ボディスキャン瞑想は必ず仰向けですか
仰向けが基本ですが、椅子に座った形でも行えます。職場など横になれない場所では、座ったままで体の感覚を順にたどる形で構いません。詳しくはボディスキャン瞑想に書いています。


