ボディスキャン瞑想とは、足の先から頭のてっぺんまで、体の各部分に順に注意を向け、そこにある感覚をありのままに感じていく瞑想です。
現代のマインドフルネス(MBSR)で基本の練習として広まりましたが、体を順に観ていく方法は、仏教の「身念処(しんねんじょ)」として古くから伝わるものです。
横になって行えるため、坐るのが難しい方や、体の緊張に気づきにくい方の入口として向いています。
ボディスキャンとは何か
「スキャン」とは、走査する、順に調べる、という意味です。ボディスキャンは、体を一つの対象として、端から端まで注意の光を当てていく瞑想です。
注意を向けた部分に、温かさ、重さ、脈打つ感じ、かゆみ、痛み、あるいは「何も感じない」という感じがあるかもしれません。どれが正解ということはなく、あるものをあるままに感じます。変えようとせず、評価もせず、しばらく留まったら次の部分へ移ります。
現代の形は、ジョン・カバットジンがマサチューセッツ大学で始めたマインドフルネス・ストレス低減法(MBSR)の中で整えられました。MBSRでは、8週間のプログラムの最初の数週間、毎日45分ほどのボディスキャンを宿題として行います。坐る瞑想より前にボディスキャンを置くのは、「考える」ことに慣れきった現代人にとって、「感じる」ことから入るほうが無理がないからだと説明されています。
ボディスキャンの基本のやり方
MBSRの形を骨格に、無理のない手順を示します。
- 仰向けに横になります。床に薄いマットか毛布を敷き、膝の下に丸めたタオルを入れると腰が楽です。椅子に深く腰かけて行ってもかまいません。
- 目は閉じます。眠気が強い場合は、薄く開けておきます。
- 数回、呼吸に注意を向け、体が床に支えられている感じを確かめます。
- 左足の指先に注意を向けます。そこにある感覚を、あるがままに感じます。何も感じなければ、「何も感じない」と気づくだけで十分です。
- 足の裏、かかと、足首、ふくらはぎ、膝、太もも、と順に上がっていきます。それぞれの部分で、少し留まります。
- 左脚が終わったら、右足の指先から同じように上がります。
- 腰、お腹、背中、胸、両手の指先から腕、肩、首、顔、頭のてっぺんへと進みます。
- 最後に、体全体をひとつのものとして感じます。呼吸が体のすみずみに届いているように感じてもよいでしょう。
- 終わるときは、指先を軽く動かし、ゆっくり目を開け、少し待ってから起き上がります。
所要時間は、初めは10分から20分で十分です。MBSRの45分は、慣れてから目指す長さです。順序は、足から頭でも、頭から足でもかまいませんが、毎回同じ順序にすると心が落ち着きやすくなります。
途中で寝てしまうとき
ボディスキャンで多い悩みは、「途中で眠ってしまう」ことです。横になって目を閉じ、体の緊張がほどけていけば、眠くなるのは当然です。
私の考えでは、仰向けで行っている場合、そのまま眠ってしまってかまいません。眠りに落ちる直前まで体に注意が向いていたなら、それは十分に瞑想です。不眠に悩む方が、眠りに入る手がかりとしてボディスキャンを使うことも、実際に行われています。
一方で、「眠るためではなく、目覚めたまま感じたい」という場合は、工夫が要ります。目を薄く開ける、椅子に坐って行う、朝の時間に行う、順序を細かく刻んで注意を忙しくする、などです。眠気への対処は 瞑想すると眠くなる原因と対処 も参考にしてください。
仏教から見たボディスキャン — 身念処との関係
体を順に観ていく瞑想は、仏教では古くから「身念処」として説かれてきました。『大念処経』は、気づきを向ける四つの領域(四念処)として、身(体)・受(感覚)・心・法を挙げ、その最初に体を置いています。
身念処には、呼吸を観る、姿勢を観る、動作を観る、体を構成する部分を観る、などの方法が含まれます。このうち「体を構成する部分を観る」方法では、髪や爪、皮膚、骨、内臓などを順に思い浮かべ、体が多くの部分の寄せ集めであることを確かめていきます。現代のボディスキャンはここから宗教的な意味づけを外し、「感覚をありのままに感じる」部分を取り出したものだと言えます。
上座部の一部の系統、たとえばゴエンカ式のヴィパッサナーでは、体の感覚を頭から足へと順に観察していく方法が実践の中心に置かれています。これは、感覚が絶えず変化していること(無常)を体感として知るためです。ボディスキャンの背後には、こうした「観」の伝統があります。
密教の瞑想も、体を観ることを大切にします。観想の多くは、自分の体の中心(胸や丹田)に月輪や梵字を置くところから始まります。体の感覚に注意が届いていなければ、その観想は宙に浮いてしまいます。体を順に感じるボディスキャンは、密教の観想に入る前の整えとしても、無理なく使えると私は思っています。
どんな人に向いているか
ボディスキャンは、次のような方に向いています。
- 坐る姿勢が辛く、長く坐れない方。横になって行えます。
- 考えごとが止まらず、呼吸に注意を留めるのが難しい方。体の部分という具体的な対象があるため、心が留まりやすくなります。
- 肩こりや息の浅さなど、体の緊張に気づきにくい方。順に観ていくことで、普段気づかない力みが見つかります。
- 看護・介護など、人の体に触れる仕事の方。自分の体への注意が、相手の体への注意の土台になります。
一方で、体の痛みや病気のことで不安が強い方は、体に注意を向けること自体が辛く感じられることがあります。その場合は無理をせず、痛い部分を飛ばすか、呼吸の瞑想から入るほうが穏やかです。
よくある誤解
「体をリラックスさせるのが目的である」 — 結果として緩むことは多いですが、目的は「感じること」です。緊張があれば、緊張を感じます。緩めようと頑張ると、かえって観察が粗くなります。
「何も感じない部分があるのは鈍感だからである」 — 感じない部分があるのは普通です。「感じない」と気づくこと自体が観察です。続けるうちに、感じる部分が増えていきます。
「必ず45分かけなければならない」 — MBSRの標準が45分というだけで、10分の短い形にも意味はあります。
「寝てしまったら失敗である」 — 先に述べたとおり、横になって行う場合、眠ることは失敗ではありません。
康照から、ひとこと
私は坐る瞑想が中心ですが、体が疲れた夜には、横になって体を順に感じることがあります。
足の先から、ゆっくりと。
そうしていると、「今日もよく働いてくれた」という思いが、自然に湧いてきます。
体は、私たちが思うより、ずっと長く黙って支えてくれているのではないでしょうか。
人生の後半になると、体の衰えばかりが目につきます。
でも、衰えを嘆く前に、今ここにある体を、一度ちゃんと感じてみる。
ボディスキャンは、体への小さな感謝の作法でもあると思っています。
よくある質問
ボディスキャンは座ってもできますか
できます。椅子に深く腰かけ、足裏を床につけて行います。横になるより眠りにくく、職場などでも行えます。
痛い部分に注意を向けると痛みが強くなります
注意を向けると、感覚は一時的にはっきりすることがあります。辛ければ、その部分は短く通り過ぎるか、飛ばしてかまいません。痛みと瞑想については 瞑想と痛み をご覧ください。
音声ガイドを使ってもよいですか
初めのうちは、順序を導いてくれる音声があると取り組みやすくなります。慣れたら、自分で順に進めてみてください。誘導瞑想(ガイド瞑想)とは も参考になります。
ボディスキャンと寝ながら瞑想は同じですか
ボディスキャンは横になって行うことが多い瞑想の一つですが、寝ながら行う瞑想にはほかの方法もあります。寝ながら瞑想はできるか をご覧ください。
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参考文献
- 『大念処経』(Mahāsatipaṭṭhāna Sutta、長部経典第22経)
- Kabat-Zinn, J. (1990). Full Catastrophe Living. Delacorte Press.(邦訳『マインドフルネスストレス低減法』北大路書房)


